ハピネス

 昨日、シネマート六本木にてホ・ジノ監督の『ハピネス』を観ました。(同じ日に同じ場所でカン・ドンウォンの『M』の舞台挨拶があったらしいが、どうだったのだろう?)ホ・ジノ作品は、『8月のクリスマス』『春の日は過ぎゆく』『四月の雪』と、いつもしみじみとした人生と恋愛を美しい自然描写と絡めてしっとりと描いていますが、この作品もそんな感じの映画でした。都会で欲望のままに生きていた男(ファン・ジョンミン)が何もかもうまくいかなくなり、肝臓を悪くして田舎の療養所に行く。そこには都会にはいない純朴な人々がいて、彼はその中でやはり肺を病んでいる女(イム・スジョン)に出会い恋に落ちる。二人は療養所を出て農家で暮らし始めるが、やがて男はそんな生活に飽き足りなくなり、都会に戻ろうとするが・・・、というようなお話です。まあいつものホ・ジノといえばそうだし、美しいけれどドラマチックすぎてちょっとストーリーが浮いた感じの『四月の雪』にくらべれば、もう少し日常感の漂った『8月のクリスマス』『春の日は過ぎゆく』の路線を継承しているかなという気がしなくもなかったですね。(ちなみに私はこれらの作品の中では『春の日は過ぎゆく』が一番好きです。)まあ、でもそれ以上の感想はあんまり湧いてこなかった。観ている最中から、ああこの作品はホ・ジノ作品だなあという以上はちょっと思いつきませんでした。でも後半に一か所だけ、イム・スジョンが木枯らしの中を走っていくシーンがあり、そこだけはちょっといいなあと思いました。それとファン・ジョンミンが都会で暮らしている時と、田舎で暮らしている時の演じわけが出きていて、うまいなあと思いました。今までそんなにうまいなあと思わなかったのでこれは嬉しい発見です。
 家に帰ってきたら、ちょうどテレビで「太王四神記」をやっていて、「はじめてみたけれど、なかなか面白いじゃないの。これからみてみようっかな。」って思っていたら、最終回でした!つくづくヨン様には縁がないですねえ。でもそのうちにまとめてDVDでみようかなあ。(でも時代劇は回数が多いから面倒だ。現在、「英雄時代」をまだ見終わっていないです。)この時間枠は今度から「ファン・ジニ」が始まるらしいです。夏に実家で2話ほどBSで見て、その後見たかったので夜中がんばって起きてなきゃ!

ポン・ジュノ アーリ−ワークス

 一昨日と今日は晴れていたので、ついにカメラをもって散歩に行った。とりあえずバシャバシャ撮ってみたけれど・・・・。訳がわからないなりに、写真はこれからお勉強ですね。(笑)

散歩しやすい季節になったので、これからはあちこち散歩しがてら写真を撮りたいな。

 それから今日は家で『ポン・ジュノ アーリーワークス』のDVDを観た。前にもレンタルして観ているんだけれど、大好きな監督なんで、また観たくなって、ついにDVDを購入したのだ。特に見直してみたかったのは『支離滅裂』。韓国映画アカデミーの卒業制作の短編作品だそうで、テレビの討論番組に出てくるような知識人たちのあきれた日常生活を描いている。知識人たちの欺瞞を鋭く描いているといえばそうなんだけれど、人間たちの馬鹿馬鹿しさとか卑小さとかそういったものがシニカルに笑える仕立てになっている。そしてそれ以上に映画の主人公たちも彼らに振り回された人々も等しくみんな必死に生活している。やれやれ、私も生きていくことにするかって感じになれる映画だった。こんな短編映画を若いときに撮っているポン・ジュノって本当にすごいなあと思う。
前も書いたと思うけれど、私が韓国映画を観るようになったきっかけはポン・ジュノの『ほえる犬は噛まない』です。最初、ほとんど期待せずに観たんだけれど、軽く衝撃を受けました。以来、ポン・ジュノ作品には特別の思い入れがあります。(「ほえる犬は噛まない」は、今でもやっぱり面白いと思うんですよ。そりゃあ「殺人の追憶」「グエムル」よりは興行成績もふるわなかったらしいし、評価も低いんでしょうけれど、逆に「殺人の追憶」や「グエムル」を最初に観ても、あの衝撃は受けなかったんじゃないかなって思います。)けれどなぜこんなに気になるのかはいまだによくわからない。まあ強いていえば、ブラックで笑えて、社会を捉える視線がはっきりしているところが好みなんですが、何かいまだに言語にできないもどかしさを抱えつつ、でも気になるのでついつい作品を見直してしまいます。この夏に韓国に行った時も、ぼんやりとポン・ジュノ作品に思いを馳せることが何度もあって、その度に色々考えてみたけれど、どうもいまだにポン・ジュノ作品の魅力って説明しにくいですね。
 そこらへんも気になってこのDVDを観たんだけれど、今回は特典映像のインタビューをきちんと全部観てみたらこれが結構よかった。ポン・ジュノ作品の常連のキム・レハの分析とかなるほどなあと思ったし、パク・ヘイルが「監督は自分のメロウな演技を嫌う。」と言ったときは、思わずニヤリとしてしまった。また新作を観て色々考えられたらいいですね。

ヨコヅナマドンナ

 昨日、本当に久しぶりに映画館へ行った。場所は、シャンテシネ。観たのは『ヨコヅナマドンナ』。実は、この映画夏に韓国でテレビで観ているんですが、その時はやはり韓国語がよくわからなかったので、もう一度きちんと観たいなあと思っていたんです。ストーリーは、歌手のマドンナに憧れている高校生の少年が性転換手術の費用のために、シルム(韓国の相撲)部に入って大会の賞金獲得を目指すというもので、コメディーです。ぽっちゃりとした主人公の男の子がマドンナに憧れるという設定から、奨学金獲得のためとはいえ、一人を除くとやる気のない先輩が集まっているシルム部に入って起こる出来事の数々が笑いを誘います。それにこの主人公の男の子は高校の日本語の教員が好きでなんですが(この役は草ナギ剛です。)妄想シーンなんかも結構笑えます。ちょっとコテコテ気味ではあるけれど、そういうコメディーが好きな人にはオススメです。
 でもそれ以上に、この前観たときにはあんまり気づかなかったことなんですが、今回観て思ったのは、この映画コメディーの割にディテールがきちんとしているなあってことでした。主人公の父と母の問題を描くことによって、ただマドンナに憧れる男の子ではなく、韓国において性転換を目指すということの選択の重さのようなものも考えさせるようになっているので不思議と切なくなってくるとこあるなあと。特に母親の役が良かった。後、草ナギ剛の役がねーちょっとねー、主人公に告白されるシーンがあるんですが、その時の日本語が気になりました。あれじゃあ、日帝時代の日本人と同じようなセリフなんじゃないかな?(私が今家で「英雄時代」をみているせいだろうか?)ちょっと、ステレオタイプに感じました。
 そういえば、この映画の舞台となったインチョンに行ってみたいなあ。インチョンといえば、「乾パン先生とコンペイトウ」「1%の奇跡」「宮S」などで土地勘が出てきたので、この映画でも見覚えがある場所が出てきて嬉しくなってしまいました。映画「子猫をお願い」以来、行ってみたい街の一つです。それから先日交通事故で亡くなったイオン(「コーヒープリンス1号店」で好演していましたよね。)がシルム部の部長で出ていて、ああこれからの役者さんだったのになあと思いました。

 その他、今日もまた雨でカメラを外へ持っていけなかった・・・。(別に雨の中で撮ってもいいんだけれど。)一体、いつになったら撮影にいけるんだあー。先週から家でみた映画は「狐怪談」「踊るJSA」「Mirror 鏡の中」「ふざけるな」「南極日誌」など。「鏡の中」はちょっと面白い心理的サスペンス映画だったけれど、後はちょっと、だった。

カメラ買った!

 もう一週間以上前なのだが、ついに一眼レフのデジカメ買った。機種はPENTAXK200D。性能とか全くよくわからないけれど、防滴・防塵機能がついていて、普通の単三電池が使えるっていうので購入。全くいい加減な理由だが、今のところわからないままガイドを読みながらいじって遊んでいます。早く外に持って行って使ってみたいのだが、仕事がたまっていてムリ。今も完全に現実逃避モード。
 さてさて、最近の生活では、先週は江戸東京博物館の「北京故宮 書の名宝展」と国立新美術館の「ウィーン美術史美術館 静物画の秘密展」にいった。二つとも仕事帰りにちょっと寄っただけなので、ゆっくりみられなかったけれど、まあまあ楽しめた。でも書の方は、私に素養がないので、本当ただ「見た」だけ。「蘭亭序」はじめ、有名人たちの筆跡をふーんと眺めたにとどまった。今年は書道部に関わっているので、もう少し書には造詣が深くなりたかったが、今の私にはどう考えても『とめはねっ!』のほうが似合いだ。ウィーンの方は、ヴァニタスとか花の絵とかが良かった。でもヤン・ブリューゲルの花の絵はもっと凝ったものがウィーンにあったはず!ウィーンもだいぶ遠い世界になってしまったねー(遠い目)。後、ベラスケスのマルガリータ王女は本当は「青い服」がお気に入りなんだが、「薔薇色の服」の方もこうやってみるといいなあと思った。
 そうですねー、後は、先週は卒業生と久しぶりに会って食事した。場所は、新宿高島屋の上の鼎泰豊(テイタイホウ)。ここは小籠包が、とってもおいしい店です。台北に本店があって、年末の旅行で食べてから日本に帰ってきてからもこの新宿店にたびたび食べに行っている。食事会はひたすら食べ、ひたすらしゃべった。みんな社会人になるとのことで、時間がずいぶん流れたのだなあ。しばし感慨に浸る。
 最近、読んだ本は仕事関係の本ばかり。家の中にその手の本があふれかえっていて、正直うんざりしているところ。関係のない本はこの前、ここで「恋愛時代」のこと書いてから気になってしまって、野沢尚の『恋愛時代』を手に入れて読みました。(文庫本は下巻がちょっと手に入りにくいね。)原作はドラマとは違う設定もあったけれど、やっぱり面白かったです。でも通勤時間に読むにはちょっと重かったなあ。(笑)いや、内容は決して難しくはなくて、さらさら読めてしまうんだけれど、ところどころ会話やストーリーがずしんと心に居座ってしまう感じのお話でした。(でも居座られてしまうと生活がしにくいんだよね。)
 韓国映画は「モーテルカクタス」「ハーピー」「肩ごしの恋人」「最強ロマンス」「クリスマスに雪が降れば」「スパイダー・フォレスト」などをDVDでみたけれど、どれもイマイチ。(もはや韓国映画は観ることに意義がある!)ただ唯川恵原作の「肩ごしの恋人」だけはちょっと元気になれる映画だったかも。

忙しいからといって・・・

 夏休みも終わり、今日から本格始動!考えてみればこの5ヶ月、よく生きていたものだ。今までの人生だってそれなりに忙しかった(と思う)。でもこの5ヶ月の忙しさは正直半端じゃなかった(ような気がする)。私にしては珍しくこのままいくとウツかもという体験をして、声は一ヶ月以上出なくなり(喉の炎症のため)、何か一生分のツケを払わされたような気分で過ごしてきた。と昨日あたりまで思っていたのだが、よくよく考えてみたら、夏休みもとったし、今年もまた一週間以上ソウルに出かけたし(今回は結構満喫した。)、映画もみているし(少なくて嫌になるが)、本もそこそこ読んで(あまりに読まないのでバカになっていくような気がしているけど)、友人と遊んで(おいしいものを食べにいくのが楽しい)、一体、どこが大変なんだ?結局は、いつもの心境「おもしろきこともなき世をおもしろく・・・」(これ高杉晋作の辞世ですね。私のモットーの一つ)に落ち着くこととなった。
 だからまあ気負わず適当にこの日記も書けるときに書いていこう。やっぱり言いたいことも時にはたまるからね。とは言っても、今日は別にさしあたって書きたいこともないかも。ああ、でも強いていえば、最近カメラ買いたいなあと思って、暇さえあればカメラ売り場にいって眺めている。生涯初の一眼レフのデジカメを買って本格的に(?)趣味の世界にしようかどうか考慮中。今まで安いオートフォーカスやコンパクトデジカメを使って何の不自由も感じなかったけれど、このごろ撮ったあとの写真みて、少し欲が出てきた。もう少し、シャッター切った時に撮りたいと思ったものが撮れているといいなあと。でも私に一眼レフ扱えるのかなあ。
 そうだなあ、後書くことといったらねえー、最近みた韓流ドラマでは『タルジャの春』が面白かった。30代負け犬女性の恋愛を描いたドラマです。その手のドラマの王道を行っているような気がするけれど、不思議とそれにノせられて愉快な気分でいられるドラマだった。今のところ、『ファンタスティックカップル』と並んで、ラブコメでは今年のイチ押し。
 でも本当の一押しは『恋愛時代』です。これ、野沢尚の同名の小説が原作のドラマです。(原作読んでいませんが・・・。)映画『王の男』のカム・ウソンと映画『ラブストーリー』『私の頭の中の消しゴム』のソン・イェジン主演のドラマなのだが、テレビドラマと思えないくらい丁寧な画面作りで、すごく見ごたえがあった。私としては韓流テレビドラマにはそういうものは求めていないのだけれど(ふだんは軽い気持ちで見られるものがいい。)、でもこのドラマはとてもよかった。みている間、野沢尚ってやっぱりすばらしい脚本家だったのだなと何度も思った。別れた夫婦が別れた後も未練があって、みたいな物語のモチーフはよくあると思うのだけれど、この手のドラマの致命傷はとにかくストーリーが動かない。別れた夫婦の会話の妙で乗り切ろうとする。一見、このドラマもそう見えるのだけれど、野沢作品はありきたりの枠組みを使っているように見えながら、ストーリーがきちんと動いていく。会話も過剰にならない。最近こういうドラマをみていなかったなあと思う。

再開・最近の出来事

 今年になったら真面目にブログを更新しようと決意していたのに思っているうちに2月後半になってしまいました。今年の初めなら10年ぶりの台湾旅行とか、軽井沢での雪の正月とか、恒例の鎌倉への初詣とかいろいろあった気もする。でも今となっては特筆すべきことは何もなし。再開する時期としてはあんまり適当でもないけれど、少し暇になったのでありふれた出来事の数々を書いてみます。
 今年になって映画館で観た映画は、2本。(正確に言うと3本なんだけれど、1本は過去に一度観たことのある映画なので省略。)一つはシネ・アミューズCQNで「カンナさん大成功です!」そしてその後同じシネ・アミューズCQNではじまった「アドリブ・ナイト」です。どちらも韓国映画です。今年も今のところ、とことん韓流に浸かっています(笑)。これらの映画は2本とも趣が全く異なるけれど、なかなか良かったです。2本とも女性が主人公で、どちらとも日本のマンガや小説が原作です。2本とも原作とはちょっと違うけれど独特の世界ができあがっていてそれがそれでよいのでは?という出来だったと思います。
 特にカンナさんの方は、整形は是か非かとかそういう小難しいことはあんまり考えなくて、ヒロインのキム・アジュンがかわいくて楽しく観れました。劇中に流れる音楽がテンポがよい。特に「マリア」はBLONDIEのオリジナルを思いだして、涙、涙でした。(1999年は20世紀だったのだ!)
 
 昨年から今年にかけてアカデミー賞作とか何も観ていないのでこんな生活していていいのかと時々自分のことが心配になるのだけれど、まあ当分はしょうがないかな(苦笑)。
 後は最近の生活だと、勤めの帰りにサントリー美術館で「ロートレック展」を観た。後、日曜日に一度、東京都美術館で「ルーブル展」を観た。この程度。「ロートレック展」はそれほど大作が来ていたとは思えないけれど、ポスターのモデルや建物のオリジナルをみると、デフォルメの仕方に芸術性を感じました。でもロートレックの絵はずっとみているとつらくなる。「ルーブル展」も結構よかったけれど、混んでいたからなあ。ミラボーのお父さんは息子よりずっといい顔をしていたので笑ってしまった!

映画あれこれ

 9月からまたまた忙しい日々が続いております。「映画を観るのもままならず、読書もCD鑑賞もできない!」と日々、嘆きながら暮らしていましたが、ふと映画の鑑賞記録メモを見たら今年はもう200本超えていた!あれ?おかしい!変だ!死にそうなくらい忙しいのに、いつこんなに映画を観たんだろう?ちなみに200本超えしたのは、3年ぶり。でもそうはいってもやっぱり映画館に行ったのは今年は断然少ない。夏から今日まで映画館で観た映画は、「私たちの幸せな時間」「ハリーポッター 不死鳥の騎士団」「ルネサンス」「今宵、フィッツジェラルド劇場にて」「サイボーグでも大丈夫」だけ。後はひたすらDVDで映画鑑賞しているわけね。しかも家で観ている映画といえば、最近は韓国映画ばっかり。寺山研著『韓国映画ベスト100 JSAからグエムルまで』を片手に、年内全作品(と言ってもDVDで観られるもののみ)制覇が今のところ目標です。久しぶりのブログなのに、全く代わり映えしないね。でもまあいいっか。映画館で観た映画の感想を2、3まとめておきます。
「私たちの幸せな時間」
もうずいぶん前に観た映画なんだけれど、結構よい作品だったなと今でも心に残っています。殺人して死刑を言い渡されても全く罪の意識のなかった男(カン・ドンウォン)と、生きることに希望が見出せない自殺癖のある女(イ・ナヨン)が接見を繰り返していくうちに各自の人生を見つめなおし、お互いの存在をかけがえのないものと意識することが出来るようになるのだけれど、その時には男の死刑執行が迫っているというストーリーです。テーマもストーリーもなかなか感動的で、それだけに映画ではありふれた感動的な物語で終わってしまうきらいのある表現の難しい映画だと思うのだけれど、主人公たちの心情の変化を丁寧にカメラが追っていたし、主人公の役者たちの演技がとても良かったなと思いました。正直、あんなにいい演技すると思わなかったんだよね。イ・ナヨンは「小さな恋のステップ」「フー・アー・ユー」「英語完全征服」とかのロマンチック・コメディでしか観たことなかったのでシリアスな映画はどうなのかと思っていたけど予想以上に迫力あった。カン・ドンウォンはそりゃあカッコよくて私も大好きな俳優なんだけれど(月並みながら一番好きな韓流スターかも)、でも出演作品でいうとコメディの「彼女を信じないで下さい」はともかく「オオカミたちの誘惑」「デュエリスト」は何ていうかスタイル先行でストーリーとしては「?」と思うこと多くてイマイチ入り込めないとこあった。今までの映画のカン・ドンウォンは一瞬ゾクッとする美しさはあっても、演技はどうなんだ?と思っていたので、この作品のカン・ドンウォンは本当よかったと思いました。

「サイボーグでも大丈夫」
復讐三部作のパク・チャヌク監督の最新作です。最近観た映画の中では一番心に残っています。実は、映画館でもう二度観ている。復讐三部作もかなり好きだけれど、この作品も相当にスゴイと思います。でもこの映画は復讐三部作とは全く違うストーリーです。何と恋愛映画です。しかも精神科の病棟が舞台。そこに入院してきた自分のことをサイボーグだと思い込んでいる拒食症の女性(イム・スジョン)と人の特技を盗む癖のある男(ピ)のラブストーリー。けれども迫力は復讐三部作に劣りませんね。この監督の作品はもともとどんな凄惨なシーンの中にもユーモア(?)が紛れ込んでいます。キャラクターは多面的に描かれている。だからストーリーに凄みがある。今回も同じです。ラブストーリーだから結構ほのぼのとユーモアもあるのだけれど、それは心が病むにはそれなりの悩みもあるわけで、一筋縄ではいかないラブストーリーが展開されていきます。凄みがある恋愛映画、いいですね。

今宵、フィッツジェラルド劇場で
今年の春先に公開されていた映画ですね。その時は見逃してしまっていて、実は9月に台風が来たときにたまたま上演していた映画館があって観ることができました。この作品はご存知、昨年亡くなったロバート・アルトマンの遺作です。あんまり考えたことないけれどアルトマンは好きな監督ベストテンには絶対入ると思う。ベストファイブでもいけるかな?いわゆる群像劇の大家ですよね。私がアンサンブル映画が結構好きなのはこの監督作品のおかげだと思います。近年、ハリウッドでもアンサンブル映画の評価は高くて嬉しい。「クラッシュ」とか「バベル」とか、すぐ思い浮かびますね。でもそれでもアルトマン作品を観てしまうと、他のアンサンブル映画は何だかチャチというか作為的に思えるんですよね。(まあ晩年のアルトマン作品は作為的な香りが漂っている気がしますが・・・。)それくらい私の映画生活の中ではアルトマンの影響大です。それとアルトマンの笑いがとても好きです。ちょっとばかりシニカルでドライな傾向をもった笑い。「M・A・S・H」「ウェディング」「ショートカッツ」「プレタポルテ」あたりが特に好きです。
で、この作品ですが、これが予想が全く裏切られた。フィッツジェラルド劇場(特に劇場の名前がいいですね。映画の中では劇場には彼の銅像がおいてあります。)で毎週カントリー音楽の公開ラジオ番組を録音しているんですが、その劇場が取り壊されることになり、最後の番組録音が行われている最中に様々なことがおこるというストーリーで、ストーリー自体はいつものアルトマンなんですけれどね。メリル・ストリープはじめ、芸達者な俳優が次から次へと見せ場をつくっていくのもいつものアルトマンだったし、予想外の出来事が次から次から起こっていくのもそうだった。でも笑いがいつものアルトマンじゃなかった。シニカルな部分がほとんどなかったんですね。どちらかというと素朴で暖かい笑いだった。アメリカ人特有の泥臭さをもった笑いっていうんでしょうかね。今までアルトマンがどちらかというと敬遠してきた類の笑いのような気がしたんですけれど、本当のアルトマンはこういう人だったのかもなあと思わせる「笑い」でした。
この映画をみてからアルトマンの「笑い」について、時々考えるようになりました。正直、この映画の「笑い」は私の好みではありません。笑いだけでいえば、もう少し鋭いほうが好きです。でも一人の人間が人生の最後に到達する「笑い」としては悪くないような気がするんです。私もいつかその地点に到達できるのだったら、人生もそう捨てたもんじゃないかもなと思わせる笑いでした。でもまあ、まだそこには行っていないのでわからない(笑)。