映画あれこれ

 9月からまたまた忙しい日々が続いております。「映画を観るのもままならず、読書もCD鑑賞もできない!」と日々、嘆きながら暮らしていましたが、ふと映画の鑑賞記録メモを見たら今年はもう200本超えていた!あれ?おかしい!変だ!死にそうなくらい忙しいのに、いつこんなに映画を観たんだろう?ちなみに200本超えしたのは、3年ぶり。でもそうはいってもやっぱり映画館に行ったのは今年は断然少ない。夏から今日まで映画館で観た映画は、「私たちの幸せな時間」「ハリーポッター 不死鳥の騎士団」「ルネサンス」「今宵、フィッツジェラルド劇場にて」「サイボーグでも大丈夫」だけ。後はひたすらDVDで映画鑑賞しているわけね。しかも家で観ている映画といえば、最近は韓国映画ばっかり。寺山研著『韓国映画ベスト100 JSAからグエムルまで』を片手に、年内全作品(と言ってもDVDで観られるもののみ)制覇が今のところ目標です。久しぶりのブログなのに、全く代わり映えしないね。でもまあいいっか。映画館で観た映画の感想を2、3まとめておきます。
「私たちの幸せな時間」
もうずいぶん前に観た映画なんだけれど、結構よい作品だったなと今でも心に残っています。殺人して死刑を言い渡されても全く罪の意識のなかった男(カン・ドンウォン)と、生きることに希望が見出せない自殺癖のある女(イ・ナヨン)が接見を繰り返していくうちに各自の人生を見つめなおし、お互いの存在をかけがえのないものと意識することが出来るようになるのだけれど、その時には男の死刑執行が迫っているというストーリーです。テーマもストーリーもなかなか感動的で、それだけに映画ではありふれた感動的な物語で終わってしまうきらいのある表現の難しい映画だと思うのだけれど、主人公たちの心情の変化を丁寧にカメラが追っていたし、主人公の役者たちの演技がとても良かったなと思いました。正直、あんなにいい演技すると思わなかったんだよね。イ・ナヨンは「小さな恋のステップ」「フー・アー・ユー」「英語完全征服」とかのロマンチック・コメディでしか観たことなかったのでシリアスな映画はどうなのかと思っていたけど予想以上に迫力あった。カン・ドンウォンはそりゃあカッコよくて私も大好きな俳優なんだけれど(月並みながら一番好きな韓流スターかも)、でも出演作品でいうとコメディの「彼女を信じないで下さい」はともかく「オオカミたちの誘惑」「デュエリスト」は何ていうかスタイル先行でストーリーとしては「?」と思うこと多くてイマイチ入り込めないとこあった。今までの映画のカン・ドンウォンは一瞬ゾクッとする美しさはあっても、演技はどうなんだ?と思っていたので、この作品のカン・ドンウォンは本当よかったと思いました。

「サイボーグでも大丈夫」
復讐三部作のパク・チャヌク監督の最新作です。最近観た映画の中では一番心に残っています。実は、映画館でもう二度観ている。復讐三部作もかなり好きだけれど、この作品も相当にスゴイと思います。でもこの映画は復讐三部作とは全く違うストーリーです。何と恋愛映画です。しかも精神科の病棟が舞台。そこに入院してきた自分のことをサイボーグだと思い込んでいる拒食症の女性(イム・スジョン)と人の特技を盗む癖のある男(ピ)のラブストーリー。けれども迫力は復讐三部作に劣りませんね。この監督の作品はもともとどんな凄惨なシーンの中にもユーモア(?)が紛れ込んでいます。キャラクターは多面的に描かれている。だからストーリーに凄みがある。今回も同じです。ラブストーリーだから結構ほのぼのとユーモアもあるのだけれど、それは心が病むにはそれなりの悩みもあるわけで、一筋縄ではいかないラブストーリーが展開されていきます。凄みがある恋愛映画、いいですね。

今宵、フィッツジェラルド劇場で
今年の春先に公開されていた映画ですね。その時は見逃してしまっていて、実は9月に台風が来たときにたまたま上演していた映画館があって観ることができました。この作品はご存知、昨年亡くなったロバート・アルトマンの遺作です。あんまり考えたことないけれどアルトマンは好きな監督ベストテンには絶対入ると思う。ベストファイブでもいけるかな?いわゆる群像劇の大家ですよね。私がアンサンブル映画が結構好きなのはこの監督作品のおかげだと思います。近年、ハリウッドでもアンサンブル映画の評価は高くて嬉しい。「クラッシュ」とか「バベル」とか、すぐ思い浮かびますね。でもそれでもアルトマン作品を観てしまうと、他のアンサンブル映画は何だかチャチというか作為的に思えるんですよね。(まあ晩年のアルトマン作品は作為的な香りが漂っている気がしますが・・・。)それくらい私の映画生活の中ではアルトマンの影響大です。それとアルトマンの笑いがとても好きです。ちょっとばかりシニカルでドライな傾向をもった笑い。「M・A・S・H」「ウェディング」「ショートカッツ」「プレタポルテ」あたりが特に好きです。
で、この作品ですが、これが予想が全く裏切られた。フィッツジェラルド劇場(特に劇場の名前がいいですね。映画の中では劇場には彼の銅像がおいてあります。)で毎週カントリー音楽の公開ラジオ番組を録音しているんですが、その劇場が取り壊されることになり、最後の番組録音が行われている最中に様々なことがおこるというストーリーで、ストーリー自体はいつものアルトマンなんですけれどね。メリル・ストリープはじめ、芸達者な俳優が次から次へと見せ場をつくっていくのもいつものアルトマンだったし、予想外の出来事が次から次から起こっていくのもそうだった。でも笑いがいつものアルトマンじゃなかった。シニカルな部分がほとんどなかったんですね。どちらかというと素朴で暖かい笑いだった。アメリカ人特有の泥臭さをもった笑いっていうんでしょうかね。今までアルトマンがどちらかというと敬遠してきた類の笑いのような気がしたんですけれど、本当のアルトマンはこういう人だったのかもなあと思わせる「笑い」でした。
この映画をみてからアルトマンの「笑い」について、時々考えるようになりました。正直、この映画の「笑い」は私の好みではありません。笑いだけでいえば、もう少し鋭いほうが好きです。でも一人の人間が人生の最後に到達する「笑い」としては悪くないような気がするんです。私もいつかその地点に到達できるのだったら、人生もそう捨てたもんじゃないかもなと思わせる笑いでした。でもまあ、まだそこには行っていないのでわからない(笑)。