物語の力

また前回の更新から10日以上あいてしまったかー。先週は週の前半だけだけれど、また軽井沢に行ってしまっていたので、完全に生活のペースが狂ってしまった。その間にあったことをメモ程度に記しておくと、
10月6日
夕方から大雨の中、南大沢に行く。アウトレットで冬物のスカートやシャツを買う。雨のせいか人が全くいないので、のんびり買い物が出来た。その後、映画を観にいく。観たのはキアヌ・リーブズとサンドラ・ブロック主演の「イルマーレ」。時間転位のラブストーリー。時間転位のラブストーリーっていうと「ある日どこかで」が思い浮かぶけれど、それよりは切なくない。あとテーマのわりにはSFチックでないところなんかはジャック・フィニイを思い出させるけれど、ジャック・フィニイより懐古調ではないか。さらりと観れて、観た後もさわやかな感じが残っていいかな。
10月8日
勤務しているところの文化祭。朝、寝坊してしまったので、お昼ごろからでかけていったが、とっても晴れていたし、なかなか良かった。やっぱり文化祭って学校ごとで全く違うんだね。今の勤務先は長唄とか箏曲とか、レトロな感じの発表があって面白かった。それに野外ライブとかいうからてっきりバンド演奏かと思ったら、ブラバンだったのが(自分のかんちがいゆえに)笑えた。招待試合とか体育会系の発表もすごくさかんだけど、私は体操部以外みれなかったし、絶品と噂高い調理部の料理も食べなかったので、後でかなりブーイングうけたが、すごく面白かった。
10月8日〜11日
文化祭のあと、夕方から軽井沢に行った。今回は新幹線に乗っていったけど、やっぱり新幹線はとても便利だ。着いたら東京とちがって風が冷たくてとても寒かった。それにすごく混んでた。夏だってこんなに混んでなかったような気がする。もしかして今がベストシーズン?
軽井沢っていっても、両親の家で過ごしているので、特にあちこち観光しているって感覚じゃない。でも普通に出かける感覚で温泉行ったり、買い物できたりできるのがいいかな。今回は、旧軽のバーゲンでセーターやスーツを手に入れた。軽井沢は巨大アウトレットが有名だけれど、今の時期だと旧軽あたりでも一流ブランドがどんどん値引きされて売られている。ブランドによっては、新幹線に乗って買いにきてもお得かもしれない。(まあ私はしないだろう。)あと、軽井沢ってレストランが充実している。だから行くといつも食べ歩きの様相を呈してくる。今回は村民食堂(星野温泉)ってとこで陶芸焼き定食を食べた。牛肉や季節の野菜を陶土にくるんで蒸し焼きしたもので、陶土を木づちでたたいて割って食べるのだ。それから食べ物といえば、玉村豊男のワイナリーに行った。ワインは売り切れていたが、これから新年度のワインができる時期だと思う。ワイナリーにはレストランがあって、ここのランチもなかなかおいしかった。
10月12日
私の誕生日だった。特になんてことはない日。ただ勤務先でも生徒にお祝いしてもらったし(これは全く予想していなかっただけに、とってもとっても嬉しかったです。)、友人からもメールとかもらった。みんなえらいなと思った。私は家族とごく少数の友人以外はほぼ人の誕生日は覚えていないのに、なんでみんなは私なんかの誕生日を覚えているんだろう?一日中、反省した。私もこれからは友人の誕生日に気を配り、そういう時にさっとメールなどでお祝いの言える人間になろう。それが大人ってものだとつくづく思った。でもそこで難問が・・・。「誕生日、いつだっけ?」っていまさら友人になかなか聞けない。
10月13日
南大沢に映画を観にいった。観たのは「フラガール」。李相日監督作品で、常磐ハワイアンセンター誕生の舞台裏の話。当時の炭鉱閉鎖の危機的状況や住民たちの閉塞感。ストリッパーと区別もつかないような地元の偏見の中で、ハワイアンダンサーになるための特訓を続ける少女たちの夢やハワイダンスの教師の女性との交流。これらがバランスよく描けている映画だった。この映画と似たようなテーマはやはり石炭王国だったイギリス映画が繰り返し描いているけれど(「リトルダンサー」や「ブラス」など)、それに匹敵する日本映画だと思う。笑えるし、泣ける。特に主人公の蒼井優は本当いいね。彼女がハワイアンダンスを母親(富司純子)の前で踊るシーンは独特な存在感ある。「花とアリス」のバレエを踊るシーンと並んで大好きです。またダンス教師役の松雪泰子も思い切りのよい演技というか、ストーリーをぴしぴしと締めていくとこがいい。それに何ていってもフィルムの色がいいかなって思った。私が小さい頃、テレビはあんな色の映像が多かった。どこか寒々とした白っぽい色を懐かしく思い出した。

最近、読んだ本。村上春樹編訳「バースデイ・ストリーズ」村上春樹の「アフターダーク」と「東京奇譚集」。ジャック・フィニイの「レベル3」、京極夏彦の「邪魅の雫」。実はこれが最近、一番嬉しかったことである。もうずいぶん前から読書が手につかなくなっていた。特に小説はもう全く読めなくなっていて、読んでも活字が頭に入ってこなくなっていた。本がただの紙のかたまりにしかみえないし、まあこのまま本が読めなくなっても正直何にも困らないかなとも思っていた。実際、ここ2ヶ月くらい一冊も小説を読んでいないけれど、自分で思った以上に困らなかった。むしろ小説が読めないことで生じた感覚とかが変で面白がっていた。でも誕生日が近づくにつれ、このまま小説を読まないまま人生を過ごすのは寂しいかもしれないと思い、村上春樹の訳した「バースデイ・ストーリーズ」を読み始めた。最初は結構無理して読んでいたもので、かなりきつかった。短編集だから助かったけれど、小学校のころ読書をはじめた時の感覚を思い出したくらい一字一句をかみしながら読まないと小説世界に入れなかった。久しぶりにこんな読書をしたせいかもしれないけど、この「バースデイ・ストーリーズ」ってすごいいい話が多かった。どの話も好きだが、「ティモシーの誕生日」「バースデイ・ケーキ」「皮膚のない皇帝」あたりの作品がリハビリ(?)の山だったので、特に心に残っている。一冊読み終わったら、あとはすんなり読めた。ちょうど軽井沢に行って時間もあったので村上春樹の本を二冊読んで、そのまま「イルマーレ」での連想からジャック・フィニイの短編集を読んで、一応買ってあった定番の京極夏彦を読んだ。こうして元の世界(?)に戻ってきたけれど、別に小説を読めなくなる前と後で私の生活は何らかわることはない。ここで劇的に変わってくれれば物語の力みたいなものを信じることができるし、映画のストーリーみたいなことになるのかもしれない。でも残念ながらそんなことにはならない。それでも言葉の力なんてものが新聞のCMくらいにしか価値のないものになってしまった水際で、小説は善戦しているんだなってことがありがたく感じられたんだよ。

とまあ、こんなところでこれからドラマ「のだめ」でもみるとしますか。