最近の読書生活

 この夏休み、もっといろいろ読書とかして有意義に過ごそうと思ったのに、全く読書が手につきません。どうも体の調子がよくない。けれど寝込むほどではないし、もう「わーーーーっ」って思うことばかりです。なんかすごい勢いでバカになっているような気がする。ピンチョンを制覇するつもりで読み始めた「V.」がまだ途中だし、唯一、P.ハイスミスだけを続けざまに読んでいます。彼女は自分はミステリー作家じゃないと言っていたらしいけれど、いつも納得。彼女の作品では、事件らしい事件は起こらない。ただ息づまるような心理描写があるきりで、普通の人間とみえる人間がみんなそうではないということがわかってきます。事件は本当は起こった時が頂点であって、推理小説というのはその頂点の時点から展開する訳だけれど、ハイスミスが取り扱うのは、頂点に至るまでの心理なんですよね。でも読書が手につかない今の事態はちょっと異常だ。

 唯一、マンガだけは好調で例の「ハチクロ」にまずはまりました。そしていつもながら山下和美の「不思議な少年」は最高ですね。4巻と5巻を何度も読み返しました。柳沢教授もそうなんだけれど、山下和美の場合、「何気ない日常がもつ意味」みたいな作品がもう絶品です。たとえば4巻の「由里香」っていう作品。合田由里香はちょっと田舎の普通の女子中学生で、授業中に外に咲いているヒマワリをみてホンワカしたり、自分が住んでいる山の向こうに行ってみたいなと夢見ている女の子です。でもそれが作品がすすんでいくと最終的には凶悪な犯罪者の心の中の風景だということが判明してくるわけです。ここらへんの展開の仕方がうまいなあといつも思います。
 山下和美はそのほかに奇想天外な作品「寿町美女御殿」1巻、2巻もあわせて楽しめました。これは柳沢教授の女性版というべきか、いやそういうと誤解されそうだけれど、「生きる楽しさ、面白さ」をストイックに追求している「教授」が女性になるとこんなにも奇想天外にダイナミックになるのかとほほえましくなる作品です。