続・映画三昧

 今日はミニシアター系で映画三昧をしようと思い、ミニシアター回数券を購入して渋谷にお出かけ。
ユーロスペースで「レイヤー・ケーキ」、シネ・アミューズで「笑う大天使(ミカエル)」、そしてイメージ・フォーラムで「キングズ&クイーン」というラインナップ。

レイヤー・ケーキ
 007の新生ボンドのダニエル・クレイグが出演しているイギリスの犯罪映画ってことで観た。観る側の期待としては、かの「ロックストック」があるわけだが、この作品はそういう意味では期待通りの「ロックストックのような」作品であった。ダニエル・クレイグ演じる麻薬のディーラーが大金を手にして引退しようとするが、最後の仕事で失敗して命の危険にさらされるというストーリーで、これでもかってくらい登場人物があらわれて主人公の見込みとずれた方向にストーリーがすすんでいき、どんでん返しの連続になる。と書くと、すごくスリリングな話みたいだけれど、実際はあんまりすっきりしない映画になってしまっている。すごく単純な案を無理やりややこしい映画に仕立てあげたようなもったり感がつきまとう。登場人物が多い割りに全くそれはストーリーに生きてこない。という意味で、「ロックストックのような」映画になってしまっている。でもこんなこといいながら、映像はスタイリッシュな部分が多くあって結構、観れてしまう。脇を固める俳優もシエナ・ミラーとかマイケル・ガンボンなど顔が知られている俳優が出て、「なぜ?」って思える。(やはりダニエル・クレイグの007効果かな。)イギリスの「それっぽい」映画をどこまで許容できるかで評価がちがってきますね。

笑う大天使(ミカエル)」
 いわずと知れた川原泉のマンガの映画化。「スイング・ガ−ル」の上原樹里が主人公で、関めぐみ伊勢谷友介など先日みた「ハチクロ」出演陣がここでも脇を固めています。「ハチクロ」が良かったので、マンガの映画化、今回も期待できるか、みたいな感じで観たけれど、結果は惨敗です。でも原作のエピソードをとりこんだ別物になっちゃっているので、腹もたたん。むしろ映画観ていて、ああ、原作のあの部分使っているんだっていうコラージュ探しみたいな気分になった。無意味にゴージャスなCGとか笑えました。
 大体、川原泉の映像化って難しいと思うな。あのほんわかしていながら妙に奥が深い絶妙なやりとりは実写では再現できないかもね。ああ、でも唯一、「暮林助教授―」だけは映像化できるんじゃないかな、あの話は映像化してほしい。とか無意味に企画を考えてしまった。

「キングズ&クイーン」
 久々のアルノー・デプレシャン作品です。マチュー・アマルリックエマニュエル・ドゥヴォスなど「そして僕は恋をする」の役者が出演しています。ストーリーは、経済的に安定したプチブルの男と再婚をすることにしたエマニュエル・ドゥヴォスが、自殺してしまった破滅的な詩人との間に生まれた男の子を、次に結婚していたこれまた破天荒なビオラ奏者の男の養子にしようと思いたち、マチュー・アマルリック演じるビオラ奏者の男が入院している精神病院にやってきて養子縁組の認知を求めるっていう話を軸に、エマニュエル・ドゥヴォスの過去の男性とのやりとりとか、作家の父親を看取ったりする生活が丁寧に描かれている。マチュー・アマルリックの精神病院での生活、若い女の子との交流とか退院してきてからの周囲との出来事も細かく描かれている。デプレシャン作品はいつも無意味に冗長なんだけれど、今回もしかりです。でもその無意味な冗長さに意味がある。端折ると本当に無意味になっちゃう訳です。
 特にこの作品なんて、ストーリーはエマニュエル・ドゥヴォスの男遍歴のお話なんですかって感じなんですが、グルノーブルで彼女の父親が亡くなり(この時のグルノーブルの風景がすごく映画とマッチしていていいです。)、父親が残した手紙によって、やっと「ああ、そうなのか。そういう話なのね。」って思えるようになってくる。この手紙がまたきつい内容で普通の親子でありえない内容なんだけれど、でもそれを受け止めて平然と幸せになろうとするエマニュエル・ドゥヴォスはすごい!強い女の人って感じです。
 一方のマチュー・アマルリックは今回も冴えないビオラ奏者で「そして僕は恋をする」から成長していないだろ?って感じありありの中年のおじさんになっています。でもなぜか私はデプレシャンのマチュー・アマルリック演じる役柄にいつも自分を見てしまうんです。同じところをグルグル回っているような思い切りの悪さみたいなものに感情移入してしまうんだよね。「そして僕は恋をする」あの博論書けずにうだうだしていた役とか、今回のビオラ奏者役とか、ああ、デプレシャンはどこかで私をみているんじゃないかって思ってしまう。(でもビオラ奏者でああいう性格の人っていないと思うんですが・・・。)まあそういう意味で、デプレシャン作品、大好きです。観れて、良かった!