睡眠不足

 ワールドカップが始まってから生活のすべてがワールドカップ観戦と録画に費やされているので、慢性的に寝不足の生活である。一応今まで毎日リアルタイムで観戦してきたが昨日(というか今日未明に)ついに力尽きて、チュニジアVSサウジアラビア戦とドイツVSポーランド戦を観ることができなかった。それについに今日は今年はじめての寝坊をして、勤務先に遅刻ぎりぎりで飛び込んだ。そんなに熱狂的なサッカーファンじゃないけれど、セリエAをほんの少し愛しているので、その延長線上でワールドカップを観ているのだ。今回も一番応援しているのはイタリアだ。いや、間違え、もちろん一番応援しているのは日本である。

 でも本当はこんなことしている場合じゃないかもしれない。実は先週、今、住んでいるマンションを建て替えるから出て行ってくれといわれてショックを受けている。4月に引っ越してきたばかりなのに、たてかえって急すぎる。これは詐欺じゃなかろうかとか事情を把握しなくちゃとか補償問題をとにかくしっかりしなければとか新しい部屋を探さなきゃとかいろいろ考えているうちに思考がまとまらなくなる。でもまあいいや。あと一ヶ月もしたら嫌でも考えなきゃいけない問題になるだろう。

 起きている時間が長いせいで、この一週間はやたらと本を読んだ。受け持ちの授業の関係で中国史憲法をちょっと学んでおこうかなと思い、その関係の新書をやたら読んだ。中国史中公新書に面白い本がたくさんあり、読んでいるうちにやみつきになった。昔読んだ本もあるのだけれど「宦官」「科挙」「史記」「中国烈女伝」「紫禁城史話」「則天武后」「西太后」など。この中で特に「科挙」と「西太后」は面白かった。憲法関係では「憲法とは何か」「憲法と国家」「憲法への招待」「憲法対論」など。ここ数年、政治について考えることを意図的に止めてきたけれど、今年はそうも言っていられないのでカムバックの意もこめて読んだ。「憲法と国家」と「憲法対論」は結構面白かったけれど、憲法について語るっていうと、なぜああいう風になってしまうんだろうという根本的な疑問が・・・・。そのほかには「自由主義の再検討」、「華族」を読んだ。特に「華族」は面白かった。

 映画は家でビデオを二本みたくらい。一本目は、またまたレオス・カラックスの映画で「POLA X」。家柄や財産や才能に恵まれた青年の前にみすぼらしい女があらわれ姉だと名乗る。青年はその話を信じて何もかも捨て彼女と生活をともにするというストーリー。運命の不条理な力とかを感じなければいけない映画なんだろう。でも前半の耽美な雰囲気をぬかすと、大真面目なつくりだけになんかところどころ笑えちゃう映画だった。

 もう一本は、ポール・ヴァーホーベンの「4番目の男」。ヴァーホーベンのオランダ時代の代表作である。バイセクシャルのアル中の作家が、講演先で魅力的な未亡人に出会い、彼女だけでなく彼女のボーイフレンドまで愛してしまう。しかし実はその未亡人の夫は過去にみんな自然ではない事故死をしていることを作家は知り、彼は彼女の魔の手から抜け出そうとするのだが、最後に思わぬどんでん返しがあって、というストーリー。昔、「ブラック・ウィドー」っていう映画あったけれど、モチーフはあれにちょっと似ている。けれどもそこはヴァーホーベンなので、芸術性高くサスペンス映画をもりあげるとみせかけて、エロ・グロで低俗に、さらに馬鹿馬鹿しくなるほどのシニカルな人物描写に徹する。昔はヴァーホーベンの映画っていうといつも後半になってくると焦点がぼやけてくるし、どうして格調高くキメられないのだろうと批判的だったのだけれど、最近はヴァーホーベンはあれでいいんだと結構楽しく観ている。慣れとは恐ろしいものである。