レオス・カラックスの作品

 先日の「ボーイ・ミーツ・ガール」がかなり気に入ったので、続いて「汚れた血」と「ポンヌフの恋人」を観た。かなりみごたえある2作品であった。(実際、時間も結構かかった。)「汚れた血」は、アレックスものの2部目で、アレックスとジュリーデルピー演じる少女との恋愛からはじまる。映画の最初のほうで、アレックスの父親が死に、アレックスは父の盗賊仲間と新薬を盗むことになった。彼は理由を告げずにジュリー・デルピーと別れ、父の仲間のうちに隠れ住むことになる。その家にはジュリエット・ビノシュ演じる年若い恋人がいて、アレックスはジュリエット・ビノシュこそ街で垣間見た「夢の女」と確信して、彼女をくどきはじめる。そのうちジュリー・デルピーも彼の居場所をつきとめ、果たしてアレックスの恋愛の行方は?そして盗みの行方は?という感じのストーリー。ストーリーは、今回はかなりスピーディーに動いていく。もちろんカラックスの作品らしくかなりアーティスティックな部分もあり、娯楽的な要素もある。映画としては「ボーイ・ミーツ・ガール」よりも完成度が高いような気がする。でもこの映画の魅力はなんといっても女優さんたち。若きジュリー・デルピーとジュリエット・ビノシュがものすごく生き生きとしていてきれいに撮れている。特にジュリー・デルピーのイノセントな美しさっていいですねー。最後のほうで、バイクでひたすらアレックスを追ってくるシーンがあるけれど、いいなあと思った。
 一方、出来上がる前からいろいろな意味で伝説だったらしい「ポンヌフの恋人」はちょっとでした。まあすごいんですけれどね。話もホームレスになってポンヌフに住み着いているアレックスと視覚を急速に失いつつある画学生でホームレスになったジュリエット・ビノシュの恋愛というすさまじい内容。確かにホームレス同士の恋愛って迫力あるし、きれいごとじゃない世界ですが、映像がところどころ幻想的な美しさに満ちていて、しかも鬼気迫る雰囲気があってよかった。けれども全体的には冗長な感じは否めないし、映像もストーリーにくらべるとどこか迫力たりなくて、ちょっとがっかりした。
 みれてよかったけれど、「ボーイ・ミーツ・ガール」をみたときのような衝撃はなかった。この2作品は、よくも悪くも映像で語っているし、ストーリーがそれなりに構成されていて、セリフも「詩」じゃなくてセリフになっていた。あまりにも当然で書くまでもないことだが、カラックスも「映画」をつくるようになったんだなと思った。