「飛ぶ教室」

 今日は昼間にBSで「飛ぶ教室」をやっていたので観た。お子様映画ではあるが、ドイツ映画だし、あのケストナーが原作なので、日本語吹き替え版なのは我慢してみることにした。近年、「点子ちゃんとアントン」などケストナーの作品を現代に翻案して作りかえられている。この「飛ぶ教室」も現代のライプツィヒの全寮制の学校が舞台。ケストナーの作品っていうのは児童文学だけれど、大人の社会をかなり反映していて決してお子様文学とはあなどれない。(まあ要するに結構好きな作家なんです。)その中でも「飛ぶ教室」はナチス前夜に書かれた作品でよく読むとそういう緊張感に満ち溢れている。それを現代に翻案するとつまらなくなるんじゃないかなと思っていたのだけれど、この映画の翻案の仕方は結構よかった。現代の全寮制ギムナジウムには通学生もいて、寮生と通学生は対立している。寮生のほうが経済的に恵まれている家庭みたいだ。でも寮生も通学生もそれぞれ家庭に問題を抱えていて、みんな大変なのだ。原作では寮の先生と寮生の隠れ家に住んでいる禁煙マンとの隠された友情物語にジーンと来るのだが、映画で一番翻案がうまかったのがこの部分かもしれない。60年代のライプツィヒ東西ドイツに引き裂かれた友情物語になっていた。
 ドイツ映画というのはご都合主義な展開もよくあるし、ちょっとダサいつくりになっていて、あーあと思う時があるんだけれど、一方でたとえ子供を主題とした映画でも、社会背景をしっかり書き込もうとする姿勢は立派だと思う。もしこの「飛ぶ教室」をハリウッドがリメイクしたとしたら単に子供たちの大人たちの感動の友情物語になってしまっただろうから・・・。