ロジェ・グルニエ「フィッツジェラルドの午前3時」

 土曜日に買ったロジェ・グルニエの「フィッツジェラルドの午前3時」を読み終えた。本を買った瞬間から読みだして、一晩で読み終えてしまうという経験を久しぶりにした。内容はフィッツジェラルドに関する評伝エッセイ。本格的な伝記みたいなものとはちょっと違うけれど、それだけに作者のフィッツジェラルドへのオマージュみたいなものがひしひしと感じられて、私もフィッツジェラルドファンだ!と再確認をさせられるような本だった。やっぱり「ギャッツビー」を超える小説なんてないよなあ。私が1920年代に限りなくシンパシーを感じるのだって、元は言えばギャッツビーだった(と思う)。それに本の題名になった「午前3時」は、あの私の大好きな名句「魂の漆黒の闇の中では、時刻はいつも午前3時だ。」で、もうそのタイトルだけで買いという感じだった。そしてこの本を読んでいた今日の午前3時は、少なくとも魂の漆黒の闇の中ではなかった。

 今日は、あとは昼間に仕事を少しした。そして午後には映画をDVDで一本観た。「2046」ウォン・カーウァイの作品って「花様年華」くらいしかみたことなくて、「2046」はSFって聞いていたので、なんだか違和感あったのだけれど、全然SFじゃなかった。ストーリーは愛した女性と離れ離れになったトニー・レオンが、ホテルの2046に暮らす女性とかかわりあいながら、「2046」というタイトルのSF小説を書くというもの。個人的には「花様年華」の続編に思えた。「花様年華」で失った女性をまだトニーレオンは探しているように思えてならなかった。「花様年華」も「2046」もストーリーとしては弱いところがあるし、映画の後半になるとメタメタになってくるところがあるのだけれど、1960年代の香港の独特な色彩の映像が近未来っぽいあやしさを放っていて、いつも幻惑される。「花様年華」といい「2046」といい、忘れていた記憶がよみがえるような気持ちになれる妙な映画である。