ドイツ映画祭

 昨日に引き続いて、今日も、有楽町・朝日ホールのドイツ映画祭2005に出かけた。今日、観たのは、『ワン・デイ・イン・ヨーロッパ』。モスクワでトルコVSスペインのチームがヨーロッパ・チャンピオンズリーグの決勝を迎えたそのときに、モスクワにおいてイギリス人女性が、イスタンブルでドイツ人男性が、サンティアゴ・デ・コンポステラにおいてはハンガリー人男性が、そしてベルリンでフランス人カップルがそれぞれ盗難事件に巻き込まれるというオムニバス映画であった。チャンピオンズ・リーグという舞台と異国で出会う盗難事件という組み合わせがうまくいかされたコメディ映画だった。途方にくれた主人公たち、ヨーロッパ特有の時間の流れ、多言語が飛び交うコミュニケーションとディスコミュニケーションの感覚を妙に懐かしく思い出せた。ドイツ映画にありがちのやりすぎの笑いがなかったのが好感もてた。

 それから、昨日、ドイツ映画祭でみた映画は次の2本。
 
 『アグネスと彼の兄弟』
 性転換して「女」になったアグネスと彼の兄たちの物語。長男はエリート政治家だが家庭にトラブルをかかえ、次男は図書館司書だけれどセックス(妄想)狂で図書館の女子トイレでのぞきをしている。そして一緒に暮らしていた男に捨てられたアグネス。こう書くとすごい設定だけれど、映画はそういう設定に流されていくことなく抑えた筆致で3兄弟の日々の格闘を描いている。とくにこういう映画にありがちな3兄弟が自身が抱えている問題を乗り越えていく話にしなかったところ、また映画に出てくる父親との関係に問題の原因を求めるというようなトラウマ探しにしなかったところがこの映画のよいところかなと思った。ドイツ映画の実力派がずらっとそろっている映画だった。特に「ラン・ローラ・ラン」「es」のモーリッツ・ブライプトロイの図書館司書の役は面白かった。彼がのぞきをしていた図書館は、その昔、「ベルリン・天使の詩」で天使がいた図書館じゃないのかな?(「ベルリン・天使の詩」のあのシーン大好きなんだけれど・・・。)なんかそのギャップがおかしかった。

 『心の鼓動』
 幼い頃に交通事故で両親をなくし、心に傷を負った救急隊員が主人公。彼は、小さい頃から決まった夢をみるのだけれど、ある日、その夢の女性に会う。彼女は、薬物中毒で死んだ恋人の子供を妊娠中で出産間近だった。二人はやがて恋に落ちるが、ある日、事故が起きて・・・、という話。こう書くとテーマは結構ありきたりなんだけれど、映像はすごくよい。とくに両親の事故以来、現実と幻想の狭間を漂って生きているような(生きていないかのような)感覚の主人公の姿がすごくよく描けている。この映画もありきたりのトラウマ探しとそれの乗り越えみたいな方向に流れていかなかったところがよかったのだと思う。
 「「こと」が起こったとき、そのままにしておいて、あとでいつかその「こと」が違う意味をもつようになることがあるということを描きたかった。」と監督が語っていたのが印象的だった。
 それから映画の中でBlackmailの曲が使われていたのだけれど、これがすごくマッチしていた。昨日、家に帰ってからBlackmailを聞きなおしてしまった。(前はピンとこなかったけれど、結構いいじゃんと思った。)