THE NOVEL 『カラマーゾフの兄弟』

 今日、ついに一年近くかかって、かのドストエフスキーの名作『カラマーゾフの兄弟』を読み終えた。もう数年前から、家にある世界文学全集を制覇しようという野望を持っているものの、なかなかそういうまっとうな小説って読む気にならず、一年に数冊読めばいいほうなのだが、今回は一年に一冊しか読めなかったわけだ・・・。いやあ、長かったですね。(昔、村上春樹のサイトでこの本のこと「マラソン小説」って書いてあったけれど、まさにその通り。)
 で、このカラマーゾフ。本当にいまさらながらの大河小説だ。すべての小説の原型がこの小説にあるといっても過言でないだろう。骨太なモチーフ、明確な役割分担をもったキャラクター、寓話に満ちたストーリー、会話。何もかもそろっている。しかしそろいすぎているゆえに少し退屈かも。あまりに原型すぎて、現代では使い古されているという気もした。でもそうはいってもやはりその質量に圧倒される小説だった。
 しかしこの本を読んでいて切に感じたことは思ったのは、こんな質量ともに重厚な小説をじっくり読む時間は現代にないということだった。19世紀に生まれればよかった。


 
 それから、今日は映画『セシル・B・ザ・シネマ・ウォーズ』をDVDで観た。ジョン・ウォーターズの映画は大好き。「シリアル・ママ」と「I loveペッカー」くらいしか観たことないけれど、この映画も最高。ストーリーは、ボルティモアのプレミアに来たメラニー・グリフィス演じる映画女優を拉致して、スティーブン・ドーフ演じるセシル・B・ディメンテッドらグループが純粋な映画を作ろうとする。ゲリラ・ロケを繰り返しながら、腐ったハリウッド映画(?)に鉄槌を下すというばかばかしさに最初はいやいや演じていたメラニー・グリフィスだが、そのうちに本気でセシル・Bに協力しだすという、いつものジョン・ウォルターズ映画。キレまくっていて、滅茶苦茶。徹底的に皮肉な視点を持ちながら、爆笑できる。しかもこの作品は、いっぷう変わった映画賛歌ともいえるだろう。(私の大好きなナンニ・モレッティの「親愛なる日記」もシャレのめされていた。)本当に、どうしてあんな映画つくれるんだろう?誰にでもオススメできる映画ではないけれど、ハマる人は確実にいるはずだ。