映画『ヴァンダの部屋』

 DVDでペドロ・コスタ監督の『ヴァンダの部屋』を観た。去年、シアターイメージフォーラムで上映していたのを見逃してしまっていたので、DVDで観られてよかった。とはいっても、上映時間、178分!家でみるには長すぎた。ストーリーらしいストーリーはない。ただひたすらリスボンの貧民街(であろう)の一角の日常が映し出されていく。生活は悲惨で、清潔とは程遠い環境、登場人物は例外なくラリっている。ただただ迫力。観ていても時間がたつのが遅くて、なかなか終わらないなあと何度思ったことか。
 でもなぜか不思議と途中で観るのをやめたくならなかったのは、映像がきれいだったからだ。街の中の部屋と外の風景の対比とか、夜の闇の中から浮かび上がる顔とか、光と影のコントラスト、独特の原色の映像がとにかく美しくて、余計な価値判断が入り込む余地がない映画だった。