映画「愛に関する短いフィルム」

 先週は週後半もそれほど仕事も忙しくなかったので、結構、家で映画観れた。ラインナップは「青い棘」「愛に関する短いフィルム」「理想の恋人.com」いつもながら滅茶苦茶だな。
「青い棘」はドイツ映画で、映画のストーリーは1927年にベルリンで起こった有名な事件をもとにしている。(映画観たあとで、オットー・フリドリク著の「洪水の前 ベルリンの1920年代」っていう本を調べたら、事件については長く説明してあったのでやっぱり当時は衝撃的だったらしい。)映画では1920年代のベルリンっていう雰囲気は感じなかったけれど、暴発寸前の青年の危うさみたいなものが幻想的な映像でつづられていて面白かった。一生に一度はこんな時期があるのかもしれないなあとぼんやり思った。自分に関するかぎりはああいう時期はあったのかもしれないけれど、断言するのは今となってはかなり気恥ずかしい。思い出すのもうっとうしいくらいだ。でも世代とか国籍をこえて、あの年齢の若者がもつ普遍的なウツウツした感じを監督は追い求めていたんじゃないかと思う。そういう感じはよく出ている映画だった。余談だけれど監督のアキム・フォン・ボリエスさんは、去年、ドイツ映画祭にきていて、そのときサインして握手もしてもらった。とてもよい人だった。「理想の恋人.com」は、まあそこそこ楽しんだが、特筆することはなし。(正直なところ、この映画をみる前日に「愛に関する短いフィルム」を観ていたので・・・。)
そして、「愛に関する短いフィルム」トリコロール三部作で有名なクシシュトフ・キエシロフスキのポーランド時代の作品。トリコロールはよい映画だ。大好きな作品だ。だからこの映画だって観る前からそこそこ感動するだろうなと思ていた。が、しかし、実際、観てみたらひどかった。実は、思った以上に衝撃を受けてしまった。いまだにひきずっている。
問題は、何にここまでに衝撃を受けているのかいまだによくわからないってことだ。冷静になると、文句はいろいろつけられる。ストーリーは若い男が団地で向かいに住む女性をストーキングするってものです。純粋な愛を素朴に信じる男の子とそんなものは一切信じなくなっている孤独な中年の女の組み合わせは映画ではありがちかもしれません。話の展開も最後のほうで虚をつかれる思いをすることはあるけれど、それ以上は別に心動かされなかった。音楽とかイマイチに感じるところあったし、大体、この映画はのちのトリコロールみたいに洗練されていないんです。でもなんていっても映像がいい。陰影にとんだ映像がとにかくすごい。しかし結局はストーリーだ音楽だ映像だなんて腑分けじゃこの映画の衝撃は全くわからないんだってこと気づかされる。時々、こういう自分につきささってくる「いたみ」をもった身体感覚というか皮膚感覚を伴う映画に出会うと、正直、どうしていいかわからなくなる。この映画は当分、心に巣食うんだろうなあ。まあこれが映画を観るという危険な行為の代償である。