かきおさめ

結局、12月は2日間しか日記かいていない。来年こそは、定期的に日記を書こうと思う。いやあ、でも12月はとにかく忙しかったのである。12月の22日までは仕事が忙しくてやってもやっても全然終わらなかったし、休みに入ってからは、部屋の掃除をかなり本格的にやった。ここ10年ほど手をつけなかったクローゼットや本箱の中のものを処分したりした。結果、現在、余計に部屋が汚れたようにも思うのだが、洋服なんかは半分以下に減ったし、本やCDなども2割くらいは減ったと思う。この調子で春までさらに部屋の中の物を処分しようと思っている。
そんな中での最近の生活について:

最近読んだ本:エリクソン「Xのアーチ」、「アムニジアスコープ」読んだのはずいぶん前なのだけれど、特に「Xのアーチ」は迫力あった。ジェファソンとその愛人であったとされるサリー・ヘミングズの関係を軸にしたラブストーリーなのだが、そこから展開される物語世界がいつもながら圧倒的ですごい。フランス革命直前のパリ、そして教皇庁が支配している街とか、動物園から動物たちが逃げ出しているベルリンとか・・・・。ありえない物語なのにそこに描かれているアメリカ史があまりに魅惑的で甘美であった。それにくらべると「アムニジアスコープ」のほうは少し小粒だけれど、それまでのエリクソンの総集編として読んでみると、結構、楽しい。
 

 W.G.ゼーバルト「移民たち」、「目眩まし」この作者の物語のすごいところは、執拗に個人的な話に終始しているのに、問題としているのは個人が歴史とどのように対峙するのかということを描き出せるということにある。人々の記憶のメカニズムというものの不自然さ、危うさをいつも問題にするくせに、物語の中で突然に浮かび上がる記憶があまりに鮮やかなので、実際に私がみた風景、見聞した物語のように感じてしまう。たとえば「目眩まし」の中にある「帰郷」、作者がおりたったインスブルックの情景は私がよく知っている情景で、何で知っているの?って思ったし、ベールやドクター・Kが体験したイタリア旅行も、私が体験したイタリア旅行に一番近い(同じイタリア旅行ではないのだが・・・。)と思う。そして「移民たち」は、歴史を文学によって記述することがかくも迫力あることなのだということを思い知らせる作品。「移民たち」の中の短編は全てホロコーストを主題としているのだが、最後までそのことについてほとんど触れずにその時代のことを描ききるのは本当に見事である。
 

最近聴いた音楽:先日のエレグラUnderworldのライブ盤CD、エレグラの余韻に浸れるCDである。まあ冷静に聴くと曲と曲のつなぎは冗長かなとも思える。けれど、今となってはあの場にいて、ライブを聴けたということが大切なのである。

The Prodigyのベスト盤Their Law The Singles1990-2005、プロディジーは最近まで実はそれほど感銘受けていなかったのだけれど、ipodで今までのアルバムを全曲通しで聴いてみたら結構カッコいいなと見直すようになった。2月のライブが楽しみですね。

Towa TeiFlash、今年聴いた中で、80年代テイストを一番強く感じた音だった。80年代音楽は一時期、語るもジョークみたいな扱いだったけれど、一回りして影響をうけたいい音楽がたくさん出てきた。その中でもこのアルバムきくと何か80年代の一番キラキラした何かを思い出せるような気分になれる。(そんなものがあるのか?と聞かれると、ちょっと困るけれどね。)

安藤裕子「あなたと私にできる事」、「Lost Child」、「さみしがり屋の言葉達」2005年に発売されたマキシシングルです。安藤さんは、いやし系の声でそれはそれだけでも心地よいのですが、最近はそこからまた一歩独自の世界つくっていっていますね。2006年はアルバムが出るので楽しみです。
 

一青窈「&」平井堅歌バカ」 今時のJPOPということで購入してみました。なんかこの年末は、私には珍しく邦楽を聞きまくりましたね。まあこの2枚のアルバムは気持ちよく掃除できるアルバムでした。
 

最近観た映画:家で観たDVD「オランダの光」、「ニュースの天才」、「猟人日記」、この中で「オランダの光」はドキュメンタリーで、17世紀のオランダ絵画に描かれた「オランダの光とは何か?」ということを絵画の歴史、絵の具、地理、地図、気候、文学などあらゆるものから解き明かそうとした映画で、とっても面白かった。映像が見事で美しくて何度も見直してしまった。「ニュースの天才」も権威ある雑誌で記事を捏造した記者の話で、こういう映画ってミステリーとして盛り上げると、途中からストーリーが失速するのだが、この映画は結構最後まで破綻なく描いているのがよかった。編集長役のピーター・サースガードが脇役ながらよかった。ヘイデン・クリステンセン演じる情けない主人公が感じがよく出ていたと思う。「猟人日記」は、ストーリーとしてはすごく苦い。海から引きあげられた女性の水死体は、実はアダムという水夫の恋人で事故だったのに、結局はその殺人犯として全く違う人物が裁判にかけられてしまうのだ。ただこの映画はストーリーよりとにかくイギリスの船上生活の映像がすごくよい。運河を船がのぼっていくシーンなんか決まっている。
  

映画館でみた映画「キングコング」、「Mr.&Mrs.スミス」、「さゆり」、「ある子供」、「Dear ウェンディ」、この中でカンヌのパルムドールの「ある子供」はやはりすごくよかった。窃盗などをしてその日ぐらしのブリュノが恋人ソニアとの間にできた赤ちゃんを売ってしまう。売ってから、ソニアが半狂乱になったため、あわてて赤ちゃんを取り戻すのだけれど、特にその後も反省をしないでそれまでの生活を続けようとする。自分の赤ちゃんを人身売買するというショッキングな内容だが、興味本位にテーマを追うのではなく、あくまでもブリュノの心の動きを淡々と追い続けるカメラワークがよい。ソニアもブリュノも極端にセリフが少ないので地味なつくりだけれど、人物の描き方がしっかりとしているのでブリュノやソニアにリアリティがある。だから最後のシーンに説得力がある。観ているときは、そんなに感銘を受けなかったけれど、あとになればなるほどぐっとくる映画だった。それにくらべると「ディア ウェンディ」は、ストーリーもなかなか面白いし、トリアーのアメリ銃社会への皮肉のきいた脚本もわかるし、Vinterberg監督の「セレブレーション」も結構好きだったのだけれど(「セレブレーション」はドグマの第一作だったはず)、一歩たりない。テーマ先行で映像にすごみがない。とはいっても、並みの映画よりはずっとよくできてたと思うけれど・・・。 「キングコング」は、骸骨島の動物たちの描き方がジャクソンの趣味全開って感じで笑えた。ただコンラッドの「闇の奥」なんかが小道具が出てくる割には(この本が出てくると嫌でも「地獄の黙示録」なんかが思い浮かぶわけだが・・・。)、他の文明との対峙ってことになるといやに大らかな監督だといつも思う。ニューヨークのキングコングには涙するくせに、骸骨島の原住民の描き方は20世紀以前という感じだ。「Mr.&Mrs.スミス」は、まあ何も考えずに笑えるアクション映画。観ている途中にちょっと目をこすったら、コンタクトレンズが目から飛び出して隣の座席にふっとぶというアクシデントに見舞われなかったら(その節は隣の方にはご迷惑をおかけいたしました。)、そんなに印象に残らなかっただろう。そして「さゆり」は、思ったより、京都の舞妓、芸妓の世界をきちんと描いているので感心したし、ストーリーも純愛ものでなかなかいいなと思ったのだけれど、着物や踊り、小道具、音楽などの細かい部分に違和感を感じてしまい、それが邪魔して最後まであんまり映画に入り込めなかった。