エリクソン「リープ・イヤー」

 先日、エリクソンの「アムニジア・スコープ」(まだ読んでいない。)を買ったのをきっかけにして、この際、読んでいないエリクソンの単行本を制覇しておこうと思い、暇なときを見つけてはちょこちょこ読んでいたのだが、今日、やっと「リープ・イヤー」を読み終えた。この本は、エリクソンの他の本とちがって1988年の大統領選挙を題材にしているノンフィクションである。とはいっても完全な大統領選挙のドキュメンタリーという訳ではなくて、ジェファソンの愛人であったとされるサリー・ヘミングズが幻想的に登場したりする(まだ読んでいないけれど「Xのアーチ」につながるのかな?)不思議な物語でもあり、大統領選挙を通じてアメリカの精神を問うようなダイナミクスを秘めている作品である。
 エリクソンっていうと、いつもは圧倒的で幻想的なラブストーリーが多くて、読んでいるとぐいぐいと引きずり込まれていくという感じになるけれど、この作品はそういう威圧感はあんまりない。けれども逆にエリクソンのもつ文体というか、言葉が非常にシンプルで力強いということを実感できた。言葉だけでアメリカ合衆国というものに立ち向かい勝負しようとする強さ。そういう強さっていうのは、誰もが持っている訳じゃない。そのことに素直に感動した。次はこのまま「Xのアーチ」を読もうと思う。

 それから最近みた映画の追加。
「イン・ハー・シューズ」(映画館でみた。)弁護士をしているキャリアウーマンだが全然男っ気がないトニ・コレット扮する姉と美人だが難読症キャメロン・ディアス扮する妹、会えばけんかばかりしているこの姉妹がそれぞれ人生を見つめなおしてどうなっていくのか?というストーリー。まあヒューマンなドラマとしてはなかなかよくできていると思う。特にトニ・コレットって何でもこなせる女優だなと感心。キャメロン・ディアスもいい味出している。特に難読症を克服していこうとするときにきっかけになるエリザベス・ビショップの詩を読むシーンがよかった。このときのエリザベス・ビショップの詩が最高にいいんだよなあ。読みたいんだけれどどこにあるかな?

 「愛の嵐」(DVDでみた。)昔から観てみたかったのだけれど、ナチス強制収容所で将校(ダーク・ボガード)にいたぶられたユダヤ人の少女(シャーロット・ランプリング)が戦後のウィーンで身を隠して生き延びている将校に出会い、その異常な愛が復活するというエキセントリックな筋立てに躊躇して今まで観なかった。しかし観てみたらエキセントリックなテーマや筋立てのわりには淡々としている映画だなと思った。まあそこにこの映画のすごみがあるといえばある。大体、70年代のこの手の映画って歴史考証なんかは割と無視するのだが、ミクロな人間ドラマを丁寧に描き出していて、今になるとそれはそれで独特な魅力があるなって気がする。