ドイツ写真の現在、そしてアウグスト・ザンダー展

 本当は、仕事をしなきゃいけない。この週末は不眠不休で仕事をしてしてもまだ足りないくらいだ。わかっている、わかりきっているのだが・・・。
 国立近代美術館で「ドイツ写真の現在」展と「アウグスト・ザンダー」展をやっていて、12月18日まで。これからもっと忙しくなって行けなくなるだろうなと思い、行くことにした。もともと写真展は気が向いたらのぞくくらいでそれほどきちんと見にいかない方なのだけれど・・・。「ドイツ写真の現在」展は非常によかった。日ごろみなれているはずの光景(風景も人もすべて)が、構図一つでこれほどまでに異世界に見えるものなのか。現在の窮地を忘れて見とれた。このまま写真の中の世界に吸い込まれてしまいたいくらいだった。
 同じ場所で「アウグスト・ザンダー」展もやっていた。アウグスト・ザンダーといえば、「若い農夫たち」(1914年)で有名な写真家である。この写真はのちに写真よりもジョン・バージャーの評論で有名になり、近年ではパワーズの「舞踏会に向かう三人の農夫」のモチーフにもなった。バージャーの評論も秀逸であると思うし、パワーズのあの本も大好きなのだが、去年、たまたまローマでアウグスト・ザンダー展をやっていて、それをみたときに違和感を感じた。アウグスト・ザンダーはよくいわれているような「階級」なんてものをこえて、もっと包括的に人間社会について微視的な考察が可能かどうか試したのだ。それは非常に壮大なプロジェクトであると同時に、個人的な暖かいまなざしなんじゃないかな。今回も見直してみてやっぱりそう思った。




 帰り、新宿のジュンク堂エリザベス・ビショップの詩集とゼーバルトの「移民たち」と「目眩まし」を買った。ぜーバルトの「アウステルリッツ」はここ2,3年のうちで一番衝撃を受けた本であるが、はやくも翻訳が出てきてうれしい限り。